言い間違いやすい日本語の練習問題(3)
■次の文の( )に入る最も適切な日本語を下から選び記号で答えなさい。
1. | 彼女の病状は( )快復に向かっている。
A 薄紙を剥ぐように B 薄皮を剥ぐように |
2. | あんな裏切り方をされると、彼が( )のも無理はない。
A 恨み骨髄に徹する B 恨み骨髄に達する |
3. | 名目は手数料だが( )という言葉の方が合っている。
A 上前をはねる B 上前をかすめる |
4. | 「念には念を入れよ」と言うが、それ以上は( )だけだ。
A 屋上屋を重ねる B 屋上屋を架す |
5. | 10点も差があると逆転はとても( )。
A おぼつきません B おぼつかない |
6. | データを改ざんするとは、科学者の( )。
A 風上にも置けない B 風下にも置けない |
7. | 観客は出演者の熱演に( )。
A 喝采を叫んだ B 喝采を送った |
8. | すぐに謝らないと彼女は( )かもしれないよ。
A 疑心暗鬼になる B 疑心暗鬼を抱く |
9. | 彼は( )で人を言いくるめる詐欺師だ。
A 舌先三寸 B 口先三寸 |
10. | 彼女は急に( )と、ひとことも喋らなくなった。
A 口をつむる B 口をつぐむ |
言い間違いやすい日本語の練習問題(3)の解答・解説
≫ 練習問題の解答を見る
■次の文の( )に入る最も適切な日本語を下から選び記号で答えなさい。
1.彼女の病状は( A )快復に向かっている。
A 薄紙を剥ぐように B 薄皮を剥ぐように
「薄紙を剥ぐように」は、病状が少しずつよくなるさまを形容した言葉です。よく、「薄皮を剥がすと、病気がよくなるどころか悪くなる」と、解説されています。
2.あんな裏切り方をされると、彼が( A )のも無理はない。
A 恨み骨髄に徹する B 恨み骨髄に達する
「恨み骨髄に徹する」は、「心の底から非常に深く恨む」という意味です。「徹する」は、「奥深くまで貫きとおる」という意味。「達する」でもよいように思えますが、「恨む気持ちが骨の芯までも染み渡る」さまを表すには、「徹する」が適していると思われます。
出典である『史記』の「秦本紀」に「穆公之怨此三人入於骨髓(穆公の此の三人を怨むや骨髄に入れり)」とあることから「恨み骨髄に入る」とも言います。
3.名目は手数料だが( A )という言葉の方が合っている。
A 上前をはねる B 上前をかすめる
「上前」は、「上米」が転じた語であると言われています。「上米」は一種の通行税で、年貢米を運ぶ業者が年貢米の一部を初穂として神社に寄進していたものが、いつしか強制的に納めさせられるようになりました。
この米を「上分米」または「運上米」と言い、神社側の行為を「上米撥ね」と言います。「上米撥ね」をしていた神社として、大阪の住吉神社が有名です。
「かすめとる」行為には違いないですが、語源から「上前をはねる」が正しい日本語です。
4.「念には念を入れよ」と言うが、それ以上は( B )だけだ。
A 屋上屋を重ねる B 屋上屋を架す
「屋上屋を架す」または「屋上屋を架する」は、屋根の上にさらに屋根をつけるという意味で、転じて「むだなことを重ねてする」という意味です。「屋下に屋を架す」とも言います。
「架す」には、「作る/かけ渡す」という意味があるのと、出典である中国の『世説新語』と『顔氏家訓』に「架する」、「架し」とあることから「重ねる」は誤用です。
『世説新語』「此是屋下架屋耳(此は是屋下に屋を架するのみ)」、『顔氏家訓』「猶屋下架屋(猶屋下に屋を架し)」。
なお、『新明解国語辞典』は、「(出典の通り「屋下に屋を架する」が正しく)後世、同じ意味で 『屋上屋を架する』 と言うのは、誤り」としています。
5.10点も差があると逆転はとても( B )。
A おぼつきません B おぼつかない
「おぼつかない」は、①「物事がはっきりしない/ぼんやりしている」、②「うまく行く見込みがない/疑わしい/だめだろう」、③「しっかりしていない/心もとない/頼りない」という意味の形容詞です。
「おぼつく」という動詞はないので「おぼつきません」、「おぼつかぬ」は誤りです。
6.データを改ざんするとは、科学者の( A )。
A 風上にも置けない B 風下にも置けない
「風上にも置けない」は、「悪臭のするものを風上に置くと臭くてたまらない」という意から、卑怯な人や卑劣な行為をののしる言葉です。「風上にも置けぬ」と表現することもあります。
7.観客は出演者の熱演に( B )。
A 喝采を叫んだ B 喝采を送った
「喝采」は、「声を上げて褒めたてること/どっとほめる声」という意味なので、「喝采を叫んだ」だと、「叫ぶ」という意味が重複するので誤用です。
「喝采を送る」の同意語として「快哉を叫ぶ」(喜びの声を上げる/心から愉快だと思う)という言葉があります。
8.すぐに謝らないと彼女は( A )かもしれないよ。
A 疑心暗鬼になる B 疑心暗鬼を抱く
「疑心暗鬼」は、「疑心暗鬼を生ず」を語源とする四字熟語です。意味は、「うたがう心が強くなると、なんでもないことが恐ろしく感じられたり、うたがわしく思えたりすること」。
「疑心暗鬼を生ず」の他に、「疑心暗鬼になる」、「疑心暗鬼に陥る」、「疑心暗鬼の状態」、「疑心暗鬼に駆られる」、「疑心暗鬼にさせる」などが使われます。
「疑心暗鬼」の中に「疑う心を抱く」という意味が含まれていますので、「疑心暗鬼を抱く」だと「抱く」という意味が重複します。なお、「疑心を抱く」という言葉はあります。
9.彼は( A )で人を言いくるめる詐欺師だ。
A 舌先三寸 B 口先三寸
「舌先三寸」は、「舌三寸」とも言い、「口先だけの巧みな弁舌(ものの言い方)/口先だけでうまく相手をあしらうこと」という意味です。
「口先」は、「心にもないうわべばかりの言いぐさ」という意味の言葉です。しかし、「口先三寸」とは言いません。※一寸=3.0303cm
10.彼女は急に( B )と、ひとことも喋らなくなった。
A 口をつむる B 口をつぐむ
「つぐむ」の漢字は「噤む・鉗む」です。「噤む」の部首は「くちへん」になっています。意味は「口を閉じる」。※「鉗」の「甘」は、口の中に物を含んださまを示しています。「金+甘」で、「金属のわくではさんで物をとじこめること」。
一方、「つむる」の漢字は「瞑る」で、部首は「めへん」になっています。意味は「目を閉じる/目をつぶる」。
≫ 練習問題の解答を隠す