言い間違いやすい日本語の練習問題(2)
■次の文の( )に入る最も適切な日本語を下から選び記号で答えなさい。
1. | 彼は( )男だからこの仕事は彼に任せておけばよい。
A 目端が利く B 目鼻が利く |
2. | 銀行に融資を依頼したが( )。
A 取りつく暇もなかった B 取りつく島もなかった |
3. | 同窓会で再会した二人は( )ようだ。
A 焼けぼっくりに火がついた B 焼けぼっくいに火がついた |
4. | ( )本の整理をしていたら妻のへそくりが出てきた。
A 暇にあかして B 暇にまかせて |
5. | 内部告発によって事件が( )。
A 明るみになった B 明るみに出た |
6. | 彼は昔の恩人を平気で( )人だ。
A 足蹴にする B 足蹴りにする |
7. | ( )ようなことをすると自分の身に跳ね返ってくるよ。
A 足をすくう B 足元をすくう |
8. | 彼は( )を感じた。
A 一抹の不安 B 一抹の希望 |
9. | 毎日のように会議があると( )のは当然だ。
A 嫌気がする B 嫌気が差す |
10. | 帰宅ラッシュ時のゲリラ雷雨でターミナル駅は( )だ。
A 上や下への大騒ぎ B 上を下への大騒ぎ |
言い間違いやすい日本語の練習問題(2)の解答・解説
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■次の文の( )に入る正しい日本語を下から選び記号で答えなさい。
1.彼は( A )男だからこの仕事は彼に任せておけばよい。
A 目端が利く B 目鼻が利く
「目端が利く」は、「先をよく見通すことができる/機転が利く」という意味です。類義語に「目先が利く」があります。「目が利く」、「鼻が利く」という日本語はありますので、「目鼻が利く」は、ふたつを合わせてしまったのでしょうか。
「端」は「はな」とも読みます。語源は「鼻」と同じです。このことから、「目端」が「目鼻」に誤用されたのかもしれません。
2.銀行に融資を依頼したが( B )。
A 取りつく暇もなかった B 取りつく島もなかった
「取りつく島もない」は、航海に出た船が、嵐にあっても立ち寄れる島がない状態のことを言います。転じて、「頼りにする手がかりがなくどうすることもできない/話を取り合おうともせず全く相手にされない」という意味で使われます。
3.同窓会で再会した二人は( B )ようだ。
A 焼けぼっくりに火がついた B 焼けぼっくいに火がついた
「焼けぼっくい」は、「焼け棒杭/焼け棒杙」が変化した言葉で、「燃えさしの棒状の木の杭」のことです。燃えさしの木はすぐに火がつきやすいことから、「焼けぼっくいに火がつく」は、「一度切れた縁が再び元に戻ること」にたとえた言葉です。特に、男女関係について言います。
「焼けぼっくり」は、「松ぼっくり」と混同したものと思われます。
4.( A )本の整理をしていたら妻のへそくりが出てきた。
A 暇にあかして B 暇にまかせて
「あかす」の漢字は「飽かす」で、「①飽きさせる」、「②満足するまで十分使う」、という意味。この場合は②の意味です。②の意味の場合、「~に-して」という形をとることが多いです。
「暇にあかして」は、「(暇なのをよいことに)十分時間をかけて」という意味です。
5.内部告発によって事件が( B )。
A 明るみになった B 明るみに出た
「明るみに出る」は、「世間一般に知られる」という意味で、「明らかになる」とも言います。「×明るみになる」は、「○明るみに出る」と「○明らかになる」を混同した語だと思われます。
6.彼は昔の恩人を平気で( A )人だ。
A 足蹴にする B 足蹴りにする
「足蹴にする」は、「①足で蹴る」、「②他人にひどい仕打ちをする」という意味です。「足蹴りにする」を②の意味で使うのは誤用です。
「足蹴」は文語の形をとどめている慣用表現なので、単純に口語化して「足蹴り」にするのは今でもなじまない、ということでしょう。 毎日新聞を含む新聞・通信各社の用語集も同様の立場を取っており「足蹴りにする→足蹴にする」といった書き換えを促しています。毎日ことば「慣用表現は「足蹴にする」だが…」
7.( A )ようなことをすると自分の身に跳ね返ってくるよ。
A 足をすくう B 足元をすくう
「足をすくう」は、「相手のすきをついて、卑劣なやり方で失敗させる」という意味です。
文化庁の「国語に関する世論調査」で、「足をすくわれる」が本来の言い方だと示した上で、「どちらの言い方を使うか」と問うたところ、以下のような結果になっています。※文化庁では「足元」を「足下」と表記。
平成19年度 (2007年度) |
平成28年度 (2016年度) |
|
○ 足をすくわれる | 16.7% | 26.3% |
× 足下をすくわれる | 74.1% | 64.4% |
「足下をすくわれる」を使っている人が圧倒的に多いのがわかります。
しかし、「すくう(掬う)」には、「下から上に持ち上げる」という意味があり、持ち上げるのは「足」か「足元」かと問われると、「足」だと答えると思います。つまり、「足元を持ち上げる」とは、言わないのではないでしょうか。
8.彼は( A )を感じた。
A 一抹の不安 B 一抹の希望
「一抹」は、「筆でほんの少しなすりつけただけの分量/ほんのわずか」という意味。「一抹の不安」という言葉はありますが、「一抹の希望」という言葉はありません。
「一抹の不安」の反意語は、「一縷の希望/一縷の望み」です。
9.毎日のように会議があると( B )のは当然だ。
A 嫌気がする B 嫌気が差す
「もう嫌だと感ずる気持ちになること」は、「嫌気が差す」、「嫌気を起こす」と言います。「嫌気」は「いやき」とも読みます。
「差す」は、ここでは「ある気持ちが生じる/ある種の気分や心的状況におそわれる」という意味です。「魔が差す」、「眠気が差す」の「差す」もこの意味。
10.帰宅ラッシュ時のゲリラ雷雨でターミナル駅は( B )だ。
A 上や下への大騒ぎ B 上を下への大騒ぎ
「上を下へ」は、「上にあるべきものが下に、下にあるべきものが上に」という意味で、「混乱するさま」を表します。
文化庁の「国語に関する世論調査」では、約6割の人が「上や下への大騒ぎ」を使っていると回答しています。
平成18年度 (2006年度) |
平成27年度 (2015年度) |
|
○ 上を下への大騒ぎ | 21.3% | 22.5% |
× 上や下への大騒ぎ | 58.8% | 60.8% |
調べると、「上へ下への大騒ぎ」を使っている人もいるようです。
単なる助詞の間違いではなく、誤用である「上や下へ」と「上へ下へ」は、「上に行ったり下に行ったり/上に行くものと下にいくものが入り乱れている」という意味で、混乱するさまを表すことができると思います。
しかし、「の大騒ぎ」が下に付くと「上を下へ」とするのが本来の日本語です。
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