言い間違いやすい日本語の練習問題(1)
■次の文の( )に入る正しい日本語を下から選び記号で答えなさい。
1. | 彼はいつも( )質問をする。
A 的を得た B 的を射た |
2. | 彼女の料理の腕前は( )だ。
A 玄人はだし B 素人はだし |
3. | 気をつけていたのに( )ことになるとは。
A 二の舞を演じる B 二の舞を踏む |
4. | 今年こそ( )して評価を上げていきたい。
A 汚名返上 B 汚名挽回 |
5. | 彼は( )曖昧な態度をとった。
A 言葉を濁して B 口を濁して |
6. | 台風7号は九州を直撃する( )なってきました。
A 公算が大きく B 公算が高く |
7. | 彼らは( )を図ることで会社を立てなおすことにした。
A 新規まき直し B 新規まき返し |
8. | 彼は来年から監督として( )ことになった。
A 采配を振る B 采配を振るう |
9. | ついに彼女は( )しまった。
A 怒り心頭に発して B 怒り心頭に達して |
10. | あの人は( )人気女優だ。
A 押しも押されぬ B 押しも押されもせぬ |
言い間違いやすい日本語の練習問題(1)の解答・解説
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■次の文の( )に入る正しい日本語を下から選び記号で答えなさい。
1.彼はいつも( B )質問をする。
A 的を得た B 的を射た
「的」は、矢や鉄砲で「射る」ものです。「的を射る」は、「的確に要点をとらえる」という意味。「当を得る」は、「道理にかなっている」という意味で、「当を得た発言」といった使い方をします。
2.彼女の料理の腕前は( A )だ。
A 玄人はだし B 素人はだし
「玄人はだし」は、「素人にもかかわらず専門家が驚くほど技能や学問がすぐれていること」という意味です。「玄人はだし」の「はだし」の漢字は「裸足/跣」です。
「はだしで逃げる」という言葉は、「とてもかなわないと見てはだしのまま逃げ出す」、転じて、「専門家でもさっさと退散したくなるほどに技量が優れている」という意味です。
「玄人はだし」は、「素人ばなれしている」と表現することもできます。
3.気をつけていたのに( A )ことになるとは。
A 二の舞を演じる B 二の舞を踏む
Bを選んだ人は、「轍を踏む」(前人の犯した失敗を繰り返すたとえ)、「二の足を踏む」(思い切れずに迷う/ためらう)と混同されているのかもしれません。
「安摩の舞」という雅楽・舞楽が演じられた後、老爺と老婆が登場し、安摩のまねをして、失敗しながらもなんとか舞おさめます。これが二の舞です。ここから、人の物まねをして失敗すること(失敗を繰り返すこと)を「二の舞を演じる」と言われるようになりました。
4.今年こそ( A )して評価を上げていきたい。
A 汚名返上 B 汚名挽回
「汚名」は、「悪い評判」、「挽回」は、「失ったものをとりかえすこと」という意味なので、「汚名挽回」だと「悪い評判を取り戻す」ということになり、「汚名挽回」は間違った日本語であるというのが一般的です。
5.彼は( B )曖昧な態度をとった。
A 口を濁して B 言葉を濁して
「言葉を濁す」は、「はっきりと言わない/あいまいに言う」という意味。「お茶を濁す/茶を濁す」は、「いい加減なことを言ったりしたりしてその場をごまかす」という意味です。
6.台風7号は九州を直撃する( A )なってきました。
A 公算が大きく B 公算が高く
「公算」は、「確実性の度合」、「確からしさ」、「確率」を意味しますので、「大きい、小さい」、「高い、低い」で表現するのが一般的です。
ただし、「公算」を「見込み」の意味で使う場合は「濃い、薄い」、「可能性」の意味で使う場合は「強い、弱い」でもよいと思われます。<参考>雑学研究会編『ことばのおもしろ雑学』コスモ出版
7.彼らは( A )を図ることで会社を立てなおすことにした。
A 新規まき直し B 新規まき返し
「まき」の漢字は、「蒔き直し」と「巻き返し」です。「蒔き直し」は、「芽が出ないので改めて種をまく」ことで、「新規蒔き直し」は、「初めからやり直すこと」という意味です。
「劣勢の状態から勢いを盛り返して反撃に転ずること」という意味の「巻き返し」と混同されやすいと言えます。「新規巻き返し」という日本語はありません。
8.彼は来年から監督として( B )ことになった。
A 采配を振るう B 采配を振る
本来の言い方は「采配を振る」です。しかし、文化庁の2017年度の調査では、「采配を振る」を使っている人は32.2%、「采配を振るう」を使っている人は56.9%という結果になっています。
だからといって、「采配を振るう」でもいいではないか、ということにはなりません。
ここでいう「振る」は、「手に持ったまま、左右または上下に(大きく)動かす」という意味です(例:旗を振る)。「振るう」は、「勢いよくふり動かす」という意味です(例:刀を振るう)。(三省堂『国語辞典』)
「采配」は、下図のような道具で、指揮官が采配を右手に持って上下に振れば右に進め、左手に持って上下に振れば左へ進め、などと決められていたようです。
9.ついに彼女は( A )しまった。
A 怒り心頭に発して B 怒り心頭に達して
「怒りが頂点に達した」という意味で、「怒り心頭に達する」が誤用されていると思われます。「心頭」は、「心の中」という意味。「怒り心頭に発する」は、「心の中から怒りを発している」ことを表現した言葉で、「心の底から激しい怒りを感じる」という意味です。
10.あの人は( B )人気女優だ。
A 押しも押されぬ B 押しも押されもせぬ
「押しも押されもせぬ」は、「実力があって堂々としている」という意味です。同じような意味の言葉に「押すに押されぬ」があります。「争うにも争われぬ/びくともしない/れっきとした」という意味。「押しも押されぬ」は、この「押すに押されぬ」と混同されていると考えられます。
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