意味を間違いやすい日本語を50語選んでみました。練習問題もありますのでご活用ください。
意味を取り違いやすい日本語【あ行】
1 | あくどい ○色、味、やり方などがしつこい/やり方がひどくてたちが悪い ×正しくない、不当だ |
2 | 雨模様(あめもよう/あまもよう) ○雨が降りそうなようす ×雨が降っているようす/小雨が降ったりやんだりする天候 |
3 | あられもない ○あってはならない/ふさわしくない/とんでもない ×恥ずかしい |
4 | 一姫二太郎(いちひめにたろう) ○最初に女の子、二番目に男の子が生まれるのが理想的 ×女の子が一人、男の子が二人生まれるのが理想的 |
5 | 穿った見方(うがったみかた) ○表面に出ていない本当の姿をとらえる見方 ×ひねくれた見方/疑った見方 |
6 | 雨後の筍(うごのたけのこ) ○似たような物事が次々と生じること ×どんどん成長していくこと |
7 | 王道(おうどう) ○楽な方法、近道 ×定番な方法、お決まり |
8 | お座なり(おざなり) ○いい加減(に行うこと)/その場の間に合わせ(にするようす) ×やらずに放っておくこと |
9 | 御の字(おんのじ) ○大いに有り難い/非常に満足である ×一応は納得できる |
意味を取り違いやすい日本語【あ行】の解説
1「あくどい」を「悪どい」と表記するのは誤りとされています。「あく」は、食材に含まれる渋みやえぐみの原因である「灰汁」を語源とする説があります。
2「雨模様」は、本来「いまにも雨が降りそうな空のようす」を示す言葉で、「雨が降っているようす」、「小雨が降ったりやんだりする天候」を示す言葉ではありません。しかし、近年は、「すでに雨が降っている状態」の時にも使われています。
3「あられもない姿」とは、「女性のひどく、だらしなくみだれた姿」のことです。これから単に「あられもない」を「恥ずかしい」という意味で使う人が多いようです。
4「一姫二太郎」とは、最初に女の子を授かり、次に男の子を授かるのが理想的であるという意味で、子供の数を表した言葉ではありません。初めての子に女の子が良いとするのは、女の子の方が育てやすく、少し成長すると母親の手助けをしてくれるなどの理由です。
5「穿つ」は、「穴を開ける、穴を掘る」という意味です。そこから転じて、「表面に出ていない本当の意味をとらえる」という意味で使われます。「君は穿った見方をするね」というのは褒め言葉です。「穿ち過ぎ」という言葉がありますが、これは掘り下げすぎて「人情の機微や物事の本質をうまくとらえられているようで、実はそれが行き過ぎ、事実から外れていること、せんさくしすぎること」という意味です。
<参考>「点滴穿石」(点滴石を穿つ):水滴でも長い年月を経ると硬い石にも穴をあけられる、つまり「小さな努力の積み重ねによって、大きな事業が達成される」。類義語に「涓滴岩を穿つ」、「雨垂れ石を穿つ」、「石の上にも三年」などがあります。
6 雨が降った後のタケノコは、ぐんと上に伸びていきます。このことから「雨後の筍」を「成長が早い」という意味で使われがちです。しかし、「雨後の筍」は、雨が降った後、タケノコが次々に地上に出てくることから、「似たような物事が次々と生じること」のたとえとして使われます。
7「学問に王道なし」という言葉があります。学問を習得するのに楽な方法や近道はなく、自ら苦労して習得しなければならないという意味です。
<参考>「幾何学に王道なし」:エジプト王のプトレマイオスが、ユークリッド(古代ギリシアの数学者)に、「幾何学を学ぶのに、おまえの著書『原論』を読むよりも簡単な方法はないか」と尋ねたところ、ユークリッドは王に「幾何学には王様のための特別な道などございません」と答えたことに由来すると言われています。「学問に王道なし」もこの逸話によるとされます。
「王道」の対義語は「覇道」(はかりごとや武力で国を治める政治)。
8「お座なり」は「いい加減(に行うこと)」という意味で、「やらずに放っておくこと」は、「なおざり」と言います。
9 将棋の藤井聡太6冠(当時)が、2023年の叡王戦の終局後、「千日手は御の字」と言ったことに私は少し驚きました。若い人(藤井聡太氏は当時20歳)が「御の字」という言葉を使うのだろうかと。ちなみに藤井聡太氏の「千日手は御の字」という言葉は、「最初からやり直しになるのは大いにありがたい」というような意味です。
文化庁が「70点取れれば御の字だ」という例文を挙げ、年齢別に「御の字」の意味を尋ねたところ、結果は下のグラフのようになりました。
16~19歳の「分からない」という人の率が高いことから、この世代はあまり「御の字」という言葉を耳にしていないのではないかと思われます。
60歳以上の人の正答率と誤答率に大きな開きがみられことから、この世代は「御の字」を間違って使っていると解釈できそうです。平成24(2012)年の調査ですので、2023年現在、70歳以上の方があてはまります。
ただ、例文の「70点取れれば御の字だ」がよくないと思います。「70点取れれば、まぁ、一応納得できるかな」とも解釈できますので。
練習問題【あ行】
■日本語として間違っている文、または、用語が本来の意味として使われていない文を一つ選び、記号で答えなさい。
(1)A:彼女の化粧はあくどい。
B:彼はあくどい商売をしてのし上がってきた。
C:社長は悪どい手段で全員を解雇した。
(2)A:すでに雨が降っています。今日一日中雨模様になるでしょう。
B:雨は降っていませんが、空を見ると雨模様です。
C:雨模様なので折りたたみ傘を持って出かけた方がいいよ。
(3)A:彼女はあられもない姿で寝ていた。
B:私はあられもない疑いをかけられた。
C:失敗してあられもない思いをしないようにもっと練習しなさい。
(4)A:「女の子を一人、男の子を二人授かりました。」「一姫二太郎だね。」
B:「最初に女の子、二番目に男の子を授かりました。」「一姫二太郎だね。」
C:「女の子、男の子、男の子の順に授かりました。」「一姫二太郎だね。」
(5)A:君の企画書は穿った見方をしていてすばらしいよ。
B:穿った見方をしたくはないが、ChatGPTで作った企画書じゃないよね?
C:彼の指摘は真相を穿っている。
(6)A:儲かるとわかると、雨後の筍のように同業者が増えた。
B:中学生のころは、雨後の筍のように身長がいっきに伸びる時期だ。
C:「ふるさと創生資金」以来、雨後の筍のごとく公共施設が建設された。
(7)A:すき焼きに長ネギを入れるのは王道ですよね。
B:受験勉強に王道があれば教えて!
C:「○○サプリってダイエットに効くらしいよ。」「ダイエットに王道なし!」
(8)A:彼はお座なりな返事をした。
B:お座なりな修理では再び家が傾くだろう。
C:メールの返事をせずにお座なりにしていたら怒られた。
(9)A:できれば明日中に配達していただければ御の字なのですが。
B:彼の説明は、まあまあ御の字ではないかと思われる。
C:監督は「負け試合のはずが引分けになったのは御の字だ」と言って喜んだ。
練習問題【あ行】の解答
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赤文字が正解です。つまり、日本語として間違っている文、または、用語が本来の意味として使われていない文です。
(1)A:彼女の化粧はあくどい。
B:彼はあくどい商売をしてのし上がってきた。
C:社長は悪どい手段で全員を解雇した。
Cの文は、「やり方がひどくてたちが悪い解雇手段」とも解釈できそうですが、「あくどい」は「悪どい」と表記しないので、間違った日本文です。
(2)A:すでに雨が降っています。今日一日中雨模様になるでしょう。
B:雨は降っていませんが、空を見ると雨模様です。
C:雨模様なので折りたたみ傘を持って出かけた方がいいよ。
「雨模様」の本来の意味は、「いまにも雨が降りそうな空のようす」です。気象庁は、「雨模様」は人によって解釈が異なるので、天気予報では使わないとしています。
(3)A:彼女はあられもない姿で寝ていた。
B:私はあられもない疑いをかけられた。
C:失敗してあられもない思いをしないようにもっと練習しなさい。
Aの「あられもない姿」=「恥ずかしい姿」と解釈できそうですが、「あられもない姿」とは、「女性のひどく、だらしなくみだれた姿」という意味です。Bの「あられもない疑い」とは、「どんでもない疑い」という意味。
(4)A:「女の子を一人、男の子を二人授かりました。」「一姫二太郎だね。」
B:「最初に女の子、二番目に男の子を授かりました。」「一姫二太郎だね。」
C:「女の子、男の子、男の子の順に授かりました。」「一姫二太郎だね。」
子供の数に関係なく、最初に女の子、二番目に男の子が生まれた状態を「一姫二太郎」と言うので、Cは正しい日本文です。
(5)A:君の企画書は穿った見方をしていてすばらしいよ。
B:穿った見方をしたくはないが、ChatGPTで作った企画書じゃないよね?
C:彼の指摘は真相を穿っている。
Bの文は、「穿った見方をしたくはない」を「疑いたくはない」という意味で使っています。「穿った見方」を相手や第三者に対して使う場合は、褒め言葉であると覚えておきましょう。
(6)A:儲かるとわかると、雨後の筍のように同業者が増えた。
B:中学生のころは、雨後の筍のように身長がいっきに伸びる時期だ。
C:「ふるさと創生資金」以来、雨後の筍のごとく公共施設が建設された。
「雨後の筍」は、雨が降った後にタケノコが次々に地上に出てくる様を語源としています。
(7)A:すき焼きに長ネギを入れるのは王道ですよね。
B:受験勉強に王道があれば教えて!
C:「○○サプリってダイエットに効くらしいよ。」「ダイエットに王道なし!」
「王道」は、「楽な方法」、「近道」という意味です。Aの文は「王道」を「定番」という意味で使っています。
(8)A:彼はお座なりな返事をした。
B:お座なりな修理では再び家が傾くだろう。
C:メールの返事をせずお座なりにしていたら怒られた。
「お座なり」は、一応何か行動をしているのに対して、「なおざり」は、何も行動をしないと覚えておきましょう。したがって、Cの文は「なおざりにしていたら」と言うべきです。
(9)A:できれば明日中に配達していただければ御の字なのですが。
B:彼の説明は、まあまあ御の字ではないかと思われる。
C:監督は「負け試合のはずが引分けになったのは御の字だ」と言って喜んだ。
「御の字」は、「大いに有り難い」、「非常に満足である」という意味で使います。Bの文は、「一応は納得できる」という意味で使われていますので、「御の字」の誤用です。
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<参考>
・ことば食堂へようこそ!(文化庁)
・「言葉のQ&A」(まとめ)(文化庁)